2ch厨房が新書等のベスト 5冊目
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0426無名草子さん
2011/11/15(火) 23:55:28.77ホロコーストについては『夜と霧』などを読んで「知ってるつもり」なのだが、まとまった歴史書は一冊も読んだことはなかった。
ナチス関係の新書は今までにもたくさん出ているようだが、ホロコーストについての新書はこれが決定版か。
冷静な筆致でユダヤ人に対する迫害と大量虐殺の過程が淡々と記述されている。
序章では、ヨーロッパの歴史上に伏在した反ユダヤ主義の潮流をざっとたどり、第Ⅰ章から第Ⅴ章まで、ナチスのユダヤ人政策の変遷を追っていく。
まずユダヤ人の追放→次にゲットーへの隔離→ソ連侵攻の際の行動部隊による大量射殺→強制収容所・絶滅収容所と進んでいく。
追放やゲットー政策が行き詰まることによって、絶滅政策が場当たり的に採用されていったということらしい。
収容所というとアウシュビッツが有名だが、その前段階の「ラインハルト作戦」におけるいくつかの絶滅収容所での犠牲者は、アウシュビッツより多い。
しかし、証拠隠滅と生存者が少ないことから、その全貌はなかなか明らかにならず知名度が低かったが、近年やっと研究が進んできたとのこと。
終章では歴史学におけるホロコースト研究の歴史と現状を述べている。犠牲者数については約600万という数字に充分な根拠があることが示されている。
また外交と戦争を中心とした国家史を記述する伝統的な歴史学ではホロコースト研究は軽視された、と述べられており、これはちょっと意外であった。
実証は困難であろうが、それだけに歴史家はその解明に全力を尽くしていたのだと思っていた。
ドイツの伝統的歴史家フリードリヒ・マイネッケの『ドイツの悲劇』という戦後すぐ出版された現代史書ではホロコーストに全く言及されてないそうである。
戦後すぐでは不明のことが多かったとは言え、完全無視とはひどい話だと思った。
人間悪の極致と言えるこの残虐行為がたかだか80年前の出来事であったこと、この一見異常な行為が反面、凡庸なありふれた悪でしかなかったことに今更ながら恐怖する。
そして現在イスラエルがパレスチナに対して行なっていることを考えるとさらに複雑な気分にもなる。
ナチスに関しては、もう一冊まとまったものを読んだほうがいいかもしれない。
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